もし「時の流れ」がなかったら
アメリカ、ドゥニ・ビルヌーヴ監督
突如、アメリカ、モンタナ州に降り立った巨大な卵型の宇宙船。同じような宇宙船が世界の12か所に姿を現した。
世界中の人々は怖れ、騒然となる。地球上に非常事態宣言がだされる、エイリアン(ヘプタボット)はなにを求めているのか。そして目的は何なのか。それを探るために言語学の第一人者であるルイーズが派遣される。
言語こそが文明の基盤であり、思考は言語によって左右される。だからルイーズは言語を理解することでエイリアンとコンタクトをとろうとする。
その一方、若くして亡くなった娘ハンナの記憶が突然、蘇ってくる。なぜだろうか。
エイリアンの表意文字には時系列がなかった。円環したような文字の視覚言語だった。彼らの言語を理解し始めたルイーズはなぜか未来を過去のように語り、過去を未来のように話す。ルイーズは未来が見えるようになっていた。
エイリアンは3000年後、「人類が私たちを助けに来るから、そのために人類を助けに来た」というメッセージを残して去ってゆく。それはウィンウィンの関係であり、数学的には「非ゼロ和サムゲーム」と呼ばれるものだった。
未来が見えるようになったルイーズには娘ハンナが若くして死ぬことが分かっていた。それでもその未来を選択するのは、ハンナと暮らす瞬間がかけがえにないものだからだ。
これはハンナの物語。「HANNAH」どちらから読んでも「HANNAH」、そこは文字だけではなく、時間が円環する世界だった。