自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

レクイエム・フォー・ドリーム 2000年

堕ちてゆく恐怖と恍惚

アメリカ、ダーレン・アロノフスキー

夏から始まり、秋、冬へと続く物語。春はやってこない。

ニューヨーク、一日中テレビを観て暮らす孤独な未亡人サラ、息子のハリーは定職に就かず、恋人のマリオンとデザイナーズショップを開くことを夢見ていた。

ハリーは友人のタイロンとヘロインの密売を始め、一時は成功するが長くは続かなかった。ハリーは「またよくなるさ」と泥沼にはまりこんでゆく。

一方、サラはテレビの視聴者参加番組への出演依頼の通知を受ける。有頂天になり赤いドレスを着ていこうとするが、肥えてしまって着ることができなかった。

 

胡散臭い医者の減量薬を飲みだす。しかしそれは危険な薬物だった。やがて異様な音が聞こえ、冷蔵庫が動き出すという幻覚を見るようになる。妄想に囚われ、瞬く間に顔が異様に変化してゆく。

ハリー、サラ、マリオン、タイロンは薬物依存に陥り、瞬く間に破滅してゆく。サラは精神科で電気ショック療法をうけ、ハリーは片腕を失い、マリオンは身体を売り、タイロンは過酷な刑をうける。

 

彼らには永遠に悪夢が続くのだ。しかしそれは夢ではなく、紛れもない現実だった、ドラッグは人を破滅させるというより破壊させるものだった。

 

どこにも救いはないが、堕ちてゆく恐怖と恍惚を感じさせ、サディスティックなおもしろさのある映画だった。

アロノフシキー監督には「ブラック・スワン」「レスラー」という優れた作品がある。