自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

完全なる報復 2009年

復讐の快感

アメリカ、F・ゲイリー・グレイ監督 108分

フィラデルフィア、妻と娘と幸せな生活を送っていたクライド、ある日、二人の暴漢に襲われて妻と娘が惨殺されてしまう。

エリート検事のニックは有罪率を維持するために司法取引に応じ、一人は死刑、実際に殺人を犯した主犯の男は3年の刑となった。

怒りが収まらないクライドは復讐を誓う。

そして10年後、クライドの策略で死刑囚は非常に苦しみながら死に、主犯の男も残虐な殺され方をする。犯人と思われたクライドは逮捕され刑務所に投獄される。

 

しかし、牢獄の中から遠隔操作で弁護士や判事や検察局のスタッフにも制裁を下してゆく。溜飲の下がるような展開だったが、なぜかニックだけが報復から逃れていた。それは「完全なる報復」というより「不完全なる報復」に近いものだった。

ちなみに原題は「法を遵守する市民」。

犯罪者と取引をする司法制度へのクライドの挑戦物語だった。最後に検事のニックは「もう殺人者と取引はしない」とクライドに告げる。それは妻と娘を殺されたクライドへの謝罪だったのかもしれない。

しかし「完全なる報復」にならなかった結末はどうも腑に落ちなかった。