泣いたらダメだ
イタリア、フランス、ドイツ ジャンニ・アメリオ監督
ジャンニは15年前、恋人が出産で死亡して、そのショックで生まれてきた男の子パオロを手放した。その後、パオロは恋人の姉夫婦に育てられた。パオロは脳性マヒとアスペルガー症候群が合わさったような障害児だった。
現在のジャンニには妻と幼い子どもがいた。ジャンニは初めて会ったパオロをベルリンのリハビリ施設につれてゆき、厳しい訓練を受けさせる。二人はその施設で障害児の娘をもつニコールという母親と知り合う。
20年も娘の介護をしてきたニコールは優しくて穏やかな女性だった。その彼女はジャンニがパオロと接している姿を見て「夫と同じ目で彼を見ている。おどおどして不安げで、他人への迷惑を恥じているような・・」と言う。そんな彼女がある日、ポツンと「娘が死んでくれたらと思う事がある」とつぶやく。
パオロは15年間も会いに来なかった父ジャンニをそっと観察する。ジャンニは罪の意識から仲良くなろうとするが、うまくいきそうでうまくいかない。
パオロはジャンニに自分は何でもできる事を見せつけようと、電車に乗って街に出て迷子になってしまう。わがままで聞きわけのないパオロを見ていると、これから先どうすればいいのだろうかと、ジャンニは思わず泣いてしまう。
その姿をみてパオロは父ジャンニに「泣いたらダメだ、僕がそばにいるから」と寄り添う。障害をもつパオロは辛くとも泣かなかったのだろう。
楽しいという作品ではないが、障害者を美化することや涙を流すことから遠く離れ、ただ障害児と共に生きてゆくことの困難さをありのままに描いていた。