自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

中村うさぎ「私という病」

「どうして私は、女であることを、おおらかに正々堂々と楽しめないのか」これが中村の長年の疑問だった。

中村が買い物依存症、ホスト依存症の次に体験したのが「デリヘル嬢」だった。47歳なのに32歳と偽って面接を受け、採用された。源氏名は「叶恭子」だった。しかし勤めたのは三日間でお客は11人だった。

 

「今回のデリヘル嬢体験で最も興味深かったのはデリヘリ嬢をやった私に対する世間の反応であった。露骨に嫌悪を表明し、風俗嬢に対する差別意識を臆面もなく曝け出したのは、女たちではなく男たちだった」

「あなたの母も妻も娘も、売春婦も・・すべての女は神でも獣でもない、あなたと同じ生身の人間なのだ」

 

1997年、東電OLが渋谷道玄坂のアパートの一室で死体となって発見された。

「昼は大企業のエリートキャリアウーマン、夜は通りすがりの男に身体を売る街娼」当時「東電OLは私だ」と直感した女たちは少なくなかった。

 

「私の意志を無視し、私の肉体を性的対象として扱うことは許せない。痴漢やセクハラをされた時、『人間性』を踏みにじられたかのような屈辱を感じるのは、そのためだ」

「自分の苦しみの正体がわからず、ただただ苦しみから這い上がろうとして、ますます泥沼にハマってしまう女たちよ、私を見よ、東電OLを見よ。我々はあなたがたのグロテスクな鏡像だ。我々の存在から発せられるメッセージを真摯に受け取って欲しい」

 

「女であること」を過剰に意識した結果こそが、「私という病」の根源なのだと彼女は語る。

「脳はみんな病んでいる」の中で池谷と中村は「自分は自閉スペクトラム症」で周りの空気を読めなくて、生きづらいと話す。

精神科医X氏は高学歴の人に自閉スペクトラム症は多く、それは異常ではなく個性だと言い、二人を自閉スペクトラム症と診断した。その診断書が巻末に載せられている。

 

自閉スペクトラム症とは対人関係が苦手、強いこだわりといった特徴をもつ発達障害の一つ。自閉症アスペルガー症候群などをまとめて表現する言葉。