生まれた日から戦争ばかり
イギリス、シリア、ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ共同監督
2012年、女子大学生だったワアドはアサド政権への反政府運動を始めたことから語り始める。彼女は激化する内戦と殺戮をスマホやデジタルカメラで撮り続けた。
医師のハザムと結婚し、娘が生まれる。アラビア語で「空」を意味する「サマ」と名付ける。「あなたは新たな愛をくれた」娘への愛に満ちた映像を撮り続ける。
2016年、シリア政府軍に包囲された南部の街アレッポ。内戦は激化し、アレッポの街はロシア軍の空爆で破壊されてゆく。多くの病院が次々と爆撃をうける。国際社会は無力だった。病院にはおびただしい血痕があり、負傷者が運び込まれ死んでゆく。
病院に妊娠9カ月の妊婦が運び込まれる。帝王切開するが子供は息をしていなかった。必死に足首をつかみ、逆さまにして身体を叩くと、突然、泣き声がした。子供が生き返ったのだ。
ワアドは「生きていることが嬉しい」「幸せは恐怖と絡み合っている」と思う。そして「この選択は間違ってはいなかっただろうか」と自分に問う。
しかし彼女は「時間を巻き戻せても同じことをする。心の傷が癒えなくても後悔しない」と言い切る。「子どもを守るため、私たちとは違う人生を与えるため、すべてはあなたのために戦っている」ここには母親としての顔があった。
内戦の記録だけではなく、私的な家族の映像記録ともいえる長編ドキュメンタリー。