一粒の中に三つの味
韓国、イ・ジャンフン監督
1988年に村人たちの手で私設駅として開業された「両元駅」の実話をモチーフにした作品。
線路はあるが、道路がなく駅まで危険な線路上を歩いていかなければならない村。小学4年生のジュンギョンは数学コンクールで優勝して、村人たちや姉ボギョンと一緒に線路上を歩いていた。その横を列車が通り過ぎてゆく。二人の母親は亡くなり、父親は列車の機関士だった。
6年後の1986年、ジュンギョンは高校生になっていた。彼は大統領に簡易駅の設置嘆願の54通もの手紙を出していた。でも音沙汰がなかった。
この映画には三つの物語が混ざり合っている。一つはジュンギョンや村人たちが両元駅を作るハートウォーミングなドラマ、そしてジュンギョンと同級生のラヒとのコミカルなラブロマンス、三つめは弟のジュンギョンを愛おしく思う姉ボギョンの物語だ。
姉の願いは一つだった。それは「行ってきます」と言って弟が笑顔でこの村から旅立つことだった。
中盤になって三つ目の物語の真実が明らかになる。その時、「あっと」驚き、映画がまったく違った様相を見せる。
原題の「奇跡」がこの映画を端的に語っている。駅のできた事が奇跡ではない。では何が奇跡なのか。