自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

アッシャー家の末裔 1928年(1997年復元)

 

サイレント末期の怪奇幻想映画の傑作

フランス、ジャン・エプスタイン監督、助監督、脚色ルイス・ブニュエル

エドガー・アラン・ポーの3篇の小説を原作としている。48分

難聴の男が友人であるアッシャー家の当主ロデリックから「不安だ、ぜひ来てくれ」という手紙を受け取り、霧に包まれた沼地のアッシャー家を訪ねる。

そこは馬車屋の御者も行きたがらない不気味な廃墟のような館だった。

ロデリックはアッシャー家の最後の一人で、血が絶えることを怖れていた。

アッシャー家には当主が代々、妻の肖像画を生きているように描かなければならないという奇妙な伝統があった。

ロデリックが妻メードラインの肖像画を描くにしたがって、絵の中の女性は生き生きとしてゆく。逆に妻は青ざめ、生気を失ってゆく。まるで絵に生命を吸い取られるようだった。

 

やがて妻は死に、洞窟に埋葬される。ロデリックは妻の死を認めたくなくて棺に釘を打つことを禁じた。しかし医者と執事は釘を打った。

「妻を生きたまま埋葬した」とロデリックは悩む。やがて激しい嵐の夜、死んだはずの妻が白い装束で現れた。妻は生き返ったのだ。

その時、ロウソクの炎が肖像画に燃え移り、やがて館が燃え始め、建物が崩れ落ちる。

風で揺れるカーテン、月のない夜、森のカエルやフクロウ、枯枝、湖面のさざなみ、大きな振り子時計、ロウソクの炎、甲冑、稲妻、濃霧・・これがアラン・ポーの世界。