自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

私は確信する 2018年

確信することの危うさ

フランス、ベルギー アントワーヌ・ランポー監督

2000年2月、フランスで実際に起こった未解決事件「ヴィギエ事件」。スザンヌ・ヴィギエが失踪し、夫のジャック・ヴィギエが殺害の容疑者になった。

しかし死体も証拠もなく、一審では無罪になった。10年後「ヴィギエ事件」の再審が行われる。シングルマザーのノラはジャックの無実を確信していた。

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スザンヌの愛人デュランデは夫ジャックが殺したと確信して卑劣な手段を使ってあらゆるデマを流してゆく。マスメディアも興味本位でニュースにする。警察の捜査も実にずさんなものだった。死体も証拠もないのにジャックを殺人罪で起訴していた。

 

ノラは高名なモレッティ弁護士に弁護を依頼する。モレッティはノラに膨大な通話記録を文章化するように言う。この通話記録の聞き取りがスリリングでこの映画の一番の面白さだった。通話記録の中に真実があった。

 

通話記録を聴くうちにノラはスザンヌの愛人デュランデが真犯人ではないかと疑うようになり、それはやがて確信に変わる。そして私たちも彼が真犯人だと確信する。

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ところが最終弁論の日、「殺人の動機をみつけた」とノラがモレッティ弁護士に報告すると「デュランデと同じような憎しみの目をしている」と拒絶される。憎しみから犯人だと決めつけるのは間違っているというのだ。

 

モレッティ弁護士は「確信」に頼ることなく、事実の積み重ねによる弁護方針を変えず推定無罪を主張した。

確信することの危うさを描いた見事な法廷劇だった。