自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

丘の上の本屋さん、2021年

本好きな人にはワクワクする物語

イタリア、クラウディオ・ロッシ・マッシミ監督、84分

イタリアの風光明媚な丘の上にある小さな古書店、店主のリベロはある日、店頭で本を見ていたアフリカ系移民の少年エシエンに声をかける。

本は好きだけど買うお金のないエシエンに興味をもったリベロは彼に店の本を次々と貸し与える。

最初は漫画の本だったが、やがて「星の王子さま」「イソップ寓話集」「ピノッキオの冒険」「ロビンソン・クルーソー」「白鯨」「アンクルトムの小屋」「シュバイツァー」「ドン・キホーテ」・・など次々と貸し与え、読んだ後、その感想を語り合う。

 

エシエンは本を読むことで新しい世界を知ってゆく。二人に年齢や国境を越えた友情が芽生えてくる。

一方、リベロはある女性の書いた1957年の日記を読み、それに引き込まれてゆく。そこには一人の女性の日々とアメリカに移住する経緯が書かれていた。

 

ある日、突然、リベロは亡くなってしまう。亡くなる少し前にリベロはエシエンに一冊の本を贈っていた。それは「世界人権宣言」だった。それが一番伝えたかったことかもしれない。

 

何も起こらない静かで小さな物語ながら、本の好きな人にはどこか惹きつけられる作品だった。リベロと友人やお客さんとの会話や小さな古書店の佇まいがこの映画の魅力だろう。