自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

あの日 あの時 愛の記憶 2011年

もう一つの「ひまわり」

ドイツ、アンナ・ジャスティス監督

1976年、ニューヨーク、夫と娘と平穏に暮らすユダヤ人女性アンナは偶然テレビ番組で、死んだと思っていた恋人トマシュの姿を見て驚く。アンナは30年以上前の辛かった日々を振り返る。

1944年、ナチス占領下のポーランド強制収容所ユダヤ人のアンナと政治犯だったポーランド人のトマシュは愛し合うようになる。そして二人で収容所を脱走して、トマシュの実家に逃げ込むが、トマシュの母はユダヤ人のアンナとの結婚を許さなかった。

 

トマシュがレジスタンスへの連絡のために、実家を離れると母親はナチスにアンナを引き渡そうとするが失敗する。トマシュをめぐって女同士の冷ややかな関係が続く。

ドイツ軍が撤退するとソ連軍がやってきて、トマシュの兄とその妻を政治犯として連行してゆく。

生き別れになったアンナとトマシュはお互いに死亡したと思っていた。二人はアメリカとポーランドで結婚し、家族をもち、そして32年の月日が経った。

 

過去の思い出に囚われていたアンナは悩んでいた。その姿を見た夫と娘に過去と決別するためにトマシュと会うことを勧められる。アンナはポーランドに向かう。

 

デ・シーカ監督の名作「ひまわり」の切なさを思い出させる映画だった。

インフォーマー 三秒間の死角 2019年

ニューヨーク市警vsFBI

イギリス、アメリカ、カナダ、アンドレア・ディ・ステファノ監督

湾岸戦争の狙撃兵だったピートは妻に乱暴しようとした男を殺し、20年の求刑を受ける。模範囚だったピートは仮釈放と交換にFBIの情報屋になる。

FBIの女性捜査官ウィルコックスの指示で麻薬組織に潜入し捜査協力をしていた。

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最後の任務でニューヨーク市警の潜入捜査官が殺されてしまう。ピートが殺したと思い市警の刑事グレンズは執拗にピートを追う。

FBIは自分たちの不手際を隠し、ピートに責任をかぶせて、切り捨てようとする。市警の刑事グレンズは「世界最大のニューヨーク市警を相手にするのか」とFBIと対立する。

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一方、麻薬組織のボスはピートに刑務所内での麻薬取引を仕切るようにと命令する。断ると妻と娘の命がなかった。ピートは仮釈放を取り消され再び刑務所に戻る。

FBIニューヨーク市警と麻薬組織から追い詰められたピートは自分が生き残る道を必死で探ろうとする。

 

サスペンスフルで波乱にとんだストーリー展開だった。刑務所内のシーンはとても細かい描写の連続で臨場感があった。終盤に近づくにしたがって引き込まれてゆく映画だ。

 

おそらく原作は相当、面白いのだろうと思ったが、その通りだった。原作の「三秒間の死角」は英国推理作家協会賞、スウェーデン最優秀犯罪小説賞を受賞していた。

ノーウェアボーイ 2009年

ビートルズになる前のジョン・レノン

イギリス、アメリカ、サム・テイラー=ウッド監督

1950年代のリバプール、落ちこぼれ(ノーウェアボーイ)の高校生ジョンはプレスリーに憧れて髪型をリーゼントにしてロックンロールに夢中になっていた。

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ジョンは5歳の時に実母ジュリアに捨てられた。その実母と16歳の時に再会する。ジョンはジュリアがすぐ近くに住んでいたことすら知らされていなかった。厳格な育ての母ミミと自由奔放なジュリアは姉妹だった。

ジョンをめぐってジュリアとミミは凄まじい言い争いの後、いつしか和解する。それぞれの流儀でジョンを深く愛していた。

 

2階建てバスの屋根に上ったり、老女にポルノ雑誌を見せたりする問題児だったジョンは退学処分を受ける。

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やがて仲間内でロックバンドを結成する。そこに15歳のポール・マッカートニージョージ・ハリスンが加わる。地元で成功した彼らは次のステップを目指してドイツのハンブルグへ向かう。

 

育ての母ミミは新しいバンド名を聞こうともしなかった。やがてそれがあの「ビートルズ」になるとは誰も思わなかった。

 

どこか物足りなさの残る作品だったが、若き日のジョン・レノンが生き生きと描かれていた。すべてが実話ではないだろうが、それでも興味津々の物語だった。