自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

痛くない死に方 2021年

生きることと死ぬこと

日本、高橋伴明監督 112分、

在宅医の河田は末期の肺がん患者を担当していた。家族は入院して痛みながらの延命治療よりも在宅での平穏な死を望んでいた。しかし患者は苦しみながら亡くなってしまう。家族は自分たちの選択が正しかったのかと疑問を持つ。

患者が苦しんで亡くなったことに衝撃をうけた河田は先輩医師の長野に相談する。病院のカルテを鵜呑みにしたのが間違いの元で「カルテではなく人間を見ろ」と長野は言う。実は肺がんだけではなく、違う病気があり、河田はそれに気づかなかったので患者は苦しんで亡くなったのだ。

 

2年後、河田は長野の下で在宅医療を続けていた。やがて団塊世代の本多という男を担当することになる。河田は本多と仲間のような関係を結んで、「痛くない死に方」を目指す。

抗がん剤や手術など医師の治療を拒否すると二度と病院では受け入れなくなるという。そして救急車を呼ぶと点滴や人工呼吸器などの管だらけになった延命治療をうけざるを得なくなる。

病院の医師は「死は敗北」だと信じて、必要以上に延命治療をする。大病院の医師は臓器の断片を見るが、在宅医は患者の物語を見る。

 

生きるとは食べることであり、食べることができなくなると枯れるように死んでゆく。無理に延命治療をする必要はない。映画ではリビングウィルの必要性を説いていた。

避けて通れない「死」という問題に在宅医からの提言だった。

 

原作は長尾和宏「痛くない死に方」「痛い在宅医」