自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

FALLフォール 2022年

ハラハラ、ドキドキの連続だった

イギリス、アメリカ、スコット・マン監督 107分

ライミング中の事故で夫ベンを亡くしたベッキーは一年たっても傷が癒されることはなく、無為の日々を過ごしていた。

親友の女性ハンターはそんなベッキーを元気づけようと、彼女の前に現れ、放置された古いテレビ塔に登り、ダンの遺灰を散布することを提案する。

ベッキーはトラウマの克服のために二人で錆びた鉄骨のテレビ塔を登り始める。しかしテレビ塔は老朽化しており、頂上にたどり着いたとき、ボルトが外れ、梯子が崩落してしまう。

彼女たちは600メートル上空に取り残されてしまう。あまりの恐怖に身がすくむようだ。

大声を出し、スマホやドローンを使って救助を求めるが、すべて失敗に終わる。やがてベッキーは死んでしまったハンターが生きているかのような幻覚を見るようになる。

傷ついたベッキーを狙ってコンドルが襲ってくるが、彼女はそのコンドルを殺し、空腹のためその肉を食らう。まさしく「適者生存」だった。

 

テレビ塔に登ろうとする二人の動機には共感できないところもあったが、それでも足のすくむような映像に見入ってしまった。本当に危険な上空での映像と見間違うような撮影に感心した。シンプルなサバイバル映画の面白さもあった。

 

300万ドルの低予算映画ながら全世界興行収入1700万ドルを稼ぎ出した。

ミーン・ストリート 1973年

スコセッシとデ・ニーロが初めて組んだ伝説的作品

アメリカ、マーティン・スコセッシ監督、112分

ニューヨークの下町に生きる若者たちの友情、暴力、挫折、青春を描いた作品。ハーヴェイ・カイテルロバート・デ・ニーロが腐れ縁の親友役を演じていた。

「ビ―・マイ・ベイビー」の曲にのって物語は始まる。

マフィア幹部の叔父をもつイタリア系のチャーリーと彼の親友であるジョニー。

ジョニーは借金まみれのイカれた男で金貸しのマイケルから多額の借金があった。いつまでも借金を返さないことでトラブルになっていた。怖いもの知らずのジョニーはそんなことを気にしていなかった。

 

チャーリーは叔父にレストランを任せるというチャンスを与えられるが、その条件として「ジョニーのような男と付き合うな」と言われる。しかし彼はどうしようもないイカれ野郎のジョニーを庇い、見捨てられなかった。

バーにたむろして喧嘩に明け暮れる男たちのチンピラのような生活とムンムンとするようなニューヨークの夜が描かれる。

 

それほど際立ったストーリーがあるわけでないが、ニューヨークの退廃的な雰囲気がひしひしと伝わってくる。ギャング映画のエッセンスがたっぷりだった。

 

前半は少しつかみどころのない展開だったが、後半に入ると物語が動いてゆき、終盤はニューヨークの闇が強烈に迫ってくる。傑作「タクシードライバー」と比べると粗削りだが、それでも初期の作品らしい初々しさが魅力だった。

CLOSE クロース 2022年

原題は「親密な友人」

ベルギー、フランス、オランダ、ルーカス・ドン監督 104分

13歳のレオとレミはいつも一緒の時間を過ごす大親友だった。花畑や森の中を競争しながら自転車で駆け抜ける二人の明るさ、その仲の良さは兄弟のようだった。

二人が中学に入学するとクラスの生徒たちから「二人はカップル?」「兄弟以上に見える」「付き合っているの」とからかわれる。レオはそれを気にして男らしいアイスホッケーのチームに入る。

 

やがてレオはレミに素っ気ない態度をとるようになる。一緒に過ごす時間が少なくなり、二人は些細なことで大げんかになる。

ある日、レミが自殺するという悲劇が起こる。レオはその責任は自分にあると思い、アイスホッケーの練習に一心に取り組むが罪の意識は消えなかった。

周りに本当のことを言えないレオの苦しみ、素っ気ない態度だけで自殺してしまうレミの弱さ、おそらく二人の少年には思春期の微妙な感情の揺れがあったのだろう。

 

レオの表情の変化や繊細さを見ていると小さなトゲが喉元に刺さったような痛みを感じる。美しい花畑で戯れる二人の幸せな姿がいつまでも記憶に残る作品、