自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ブーリン家の姉妹 2008年

英国王室の歴史のおもしろさ

イギリス、アメリカ、ジャスティン・チャドウィック監督 115分

16世紀、イングランド王ヘンリー8世の時代。新興貴族のブーリン家は出世のために世継ぎの男児に恵まれないイングランド王ヘンリーに姉のアンを差し出す。

しかし王が望んだのは妹のメアリーだった。

ヘンリー8世に王妃はいたが男児を産むことができなかった。メアリーは王の愛人として男児を産むことを求められていた。一族の権力や富のために女性は道具として利用される時代だった。

 

宮廷内でのヘンリー8世とアンとメアリーのドロドロとした愛憎劇が展開する。従順なメアリーに対してアンは野心家で王を誘惑して強引に王妃になる。そのためにヘンリー8世はカトリック教会から離れ、英国国教会を設立する。

後に、アンは斬首されるが、皮肉なことに彼女の産んだ娘、エリザベスが英国を45年間統治するエリザベス一世になる。この映画は英国の黄金時代に繋がる物語だったのだ。

 

姉アン役のナタリー・ポートマン、妹メアリー役のスカーレット・ヨハンソンとそれぞれ魅惑的な佇まいと演技だった。

史実にどこまで忠実なのか分からないが、当時、女性の置かれていた地位や歴史の残酷さを描いていた。英国王室の歴史を知ることのできる興味深い作品だ。

FALLフォール 2022年

ハラハラ、ドキドキの連続だった

イギリス、アメリカ、スコット・マン監督 107分

ライミング中の事故で夫ベンを亡くしたベッキーは一年たっても傷が癒されることはなく、無為の日々を過ごしていた。

親友の女性ハンターはそんなベッキーを元気づけようと、彼女の前に現れ、放置された古いテレビ塔に登り、ダンの遺灰を散布することを提案する。

ベッキーはトラウマの克服のために二人で錆びた鉄骨のテレビ塔を登り始める。しかしテレビ塔は老朽化しており、頂上にたどり着いたとき、ボルトが外れ、梯子が崩落してしまう。

彼女たちは600メートル上空に取り残されてしまう。あまりの恐怖に身がすくむようだ。

大声を出し、スマホやドローンを使って救助を求めるが、すべて失敗に終わる。やがてベッキーは死んでしまったハンターが生きているかのような幻覚を見るようになる。

傷ついたベッキーを狙ってコンドルが襲ってくるが、彼女はそのコンドルを殺し、空腹のためその肉を食らう。まさしく「適者生存」だった。

 

テレビ塔に登ろうとする二人の動機には共感できないところもあったが、それでも足のすくむような映像に見入ってしまった。本当に危険な上空での映像と見間違うような撮影に感心した。シンプルなサバイバル映画の面白さもあった。

 

300万ドルの低予算映画ながら全世界興行収入1700万ドルを稼ぎ出した。

ミーン・ストリート 1973年

スコセッシとデ・ニーロが初めて組んだ伝説的作品

アメリカ、マーティン・スコセッシ監督、112分

ニューヨークの下町に生きる若者たちの友情、暴力、挫折、青春を描いた作品。ハーヴェイ・カイテルロバート・デ・ニーロが腐れ縁の親友役を演じていた。

「ビ―・マイ・ベイビー」の曲にのって物語は始まる。

マフィア幹部の叔父をもつイタリア系のチャーリーと彼の親友であるジョニー。

ジョニーは借金まみれのイカれた男で金貸しのマイケルから多額の借金があった。いつまでも借金を返さないことでトラブルになっていた。怖いもの知らずのジョニーはそんなことを気にしていなかった。

 

チャーリーは叔父にレストランを任せるというチャンスを与えられるが、その条件として「ジョニーのような男と付き合うな」と言われる。しかし彼はどうしようもないイカれ野郎のジョニーを庇い、見捨てられなかった。

バーにたむろして喧嘩に明け暮れる男たちのチンピラのような生活とムンムンとするようなニューヨークの夜が描かれる。

 

それほど際立ったストーリーがあるわけでないが、ニューヨークの退廃的な雰囲気がひしひしと伝わってくる。ギャング映画のエッセンスがたっぷりだった。

 

前半は少しつかみどころのない展開だったが、後半に入ると物語が動いてゆき、終盤はニューヨークの闇が強烈に迫ってくる。傑作「タクシードライバー」と比べると粗削りだが、それでも初期の作品らしい初々しさが魅力だった。