「シネマ・ヴェリテ」という映画館
もしかしたら映画よりも映画館のほうが印象に残っている場合があるかもしれない。だれにでも懐かしい映画館とそこで観た映画の思い出がある。
ずいぶん前だが大阪、梅田の阪急東通りの地下のミニシアターが突然、閉館になった。いつの間にか映画館名を忘れてしまい、気にはなっていたがそのままにしていた。
最近それをネットで調べると簡単に「シネマ・ヴェリテ」という映画館だと分かった。
「シネマ・ヴェリテ」は1990年頃に開館して数年後に閉館した。梅田堂山町、新御堂筋沿いの扇会館の地下一階にあり、薄暗く狭い階段を下りてゆく。
この地下階段の壁に映画情報のチラシが何枚も貼ってあり、なんだか自分がいっぱしの映画通になったようでいい気分だった。たしか50席ほどの劇場だったと思う。
ここでポーランド映画「愛に関する短いフィルム」が上映されていて、すごく感動して今もなお私のベスト映画の一つだ。
地下の映画館は異界に紛れ込んだようでどことなく好きだ。映画が終って地上に出てみると「人類が滅亡」しているどころか人であふれかえっている。エイリアンもヴァンパイアもターミネーターもいないいつもの見慣れた町だった。
「シネマ・ヴェリテ」とはフランス語で「映画、真実」の意味だという。
とてもいい名前だ。