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映画に関する短いエッセイとその他

ハーブ&ドロシー

ハーブ&ドロシー

2008年 アメリカ、佐々木芽生監督 

ハーブとドロシーのヴァーゲル夫妻は1960年代にアーティストからコレクターになった。ハーブは郵便局で仕分けの仕事を、ドロシーは図書館勤務で決して裕福ではなかった。二人は猫好きで子供はいなかった。

だれも見向きもしない若手アーティストの作品を少しずつ買い足していった。画廊やアトリエを訪ね、自分たちのわずかな収入に見合い、しかも気に入ったものだけを買っていた。

色や形を最小限に抑えたミニマルアートがほとんどでそれを狭いアパートに飾っていた。

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美意識は人によって違うが審美眼は天性のもので二人はそれをもっていた。ハーブは作品をじっと見つめた後に「美しい」という言葉をつぶやく。またある作品を手にとり「作品は理解できなかったが独創的なので買った」「お金がものを言えば芸術が沈黙する」と淡々と話す。

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ハーブとドロシーは少ない収入から好きなアート作品を少しずつ買い求めただけに過ぎなかった。いつしかそれは膨大で素晴らしい現代芸術のコレクションになり、やがてアメリ国立美術館ナショナルギャラリーに寄付された。多くの人がそのコレクションのあまりの素晴らしさに驚嘆した。

映画そのものよりも自由にありのままに生きる二人の姿がアートそのもののようで爽快な気分になった。