ハードボイルドと人情劇
1938年、ロサンゼルス、深夜、一人の男がよろめきながらオフィスに帰ってくる。彼は録音機にむかって殺人の告白を始める。
男は保険会社の有能な外交員ウォルター・ネフだった。彼は顧客のディートリクスンの邸宅で妻の美しいフィリスに出会い、惹きつけられ、不倫関係になる。
そして保険金目当てで夫のディートリクスン殺害に加担する。殺人は計画通り完璧だった。後は保険金ももらうだけだった。
ところが保険会社の敏腕調査員のキーズに疑いをもたれる。キーズとネフは同僚であり、古くからの友人だった。
フィリスが悪女だったという事が分かると、ネフはやけになって銃を持ったフィリスに向かって「撃てよ。なぜ撃たない。愛しているなんて信用しないぜ」
「そうよ、あなたを利用しただけ・・でもあなたを愛してしまったの」二人がもみ合っているうちに銃が暴発する。
ハードボイルド作家のチャンドラーとワイルダー監督の共同脚本のせいなのか単なるフィルム・ノワールで終わるのではなく、どこかユーモアがあって人情ドラマの味わいがあった。緩やかに続く緊張感も心地よかった。エドワード・G・ロビンソンの存在感も忘れがたい。
最近の映画に比べるとストーリーはいたってシンプルでバイオレンスシーンもない。そのぶん物足りなさを感じることもあるが、テーマも面白さもすべてがコンパクトにまとまっていた。
私たちはこのような娯楽映画から多くのことを学んできた。