自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

森本あんり「宗教国家アメリカの不思議な論理」

神学的な観点がないとアメリカを理解できない

「神は、従う者には恵みを与え、背く者には罰を与える。自分は成功し、恵まれている。だから神は自分を是認している。自分は正しい」という勝者の論理がアメリカを貫いている。

このアメリカ的な精神や論理を露骨に体現しているのがトランプ。

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平等主義と信仰復興運動が反知性主義の原点。大卒のインテリ牧師だけが幅をきかせるピューリタニズムの知性主義の反動として生まれた。無学で胡散臭い多くの巡回伝道師が広場で説教をする。

18世紀、急激に人口が増えたことと大衆メディアの発達がその原因だった。神の前の平等を唱える巡回伝道師たちが奴隷解放運動を担い、黒人たちの文化と教会を開花させた。

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ちなみに反知性主義とは知性に反発することではなく、「知性がすべてだ」という独善に反発するもの。ここに知識階級と大衆の断絶がある。

 

政教分離は政治権力に対して宗教的熱情を確保するためだ。知性は権力と結びつきやすい。進化論という科学に反発しているのではなく、それを政治権力が一般家庭に押し付けることに反発する。家庭における価値観や教育に権力が踏み込んでくることに反発する。政治権力とは別の権威で自分を支えてくれるもの、それが宗教だ。日本にはないものだ。

世界を覆っているポピュリズムは宗教的熱情に似ている。

 

「神よ、変えるべきものを変える勇気、変えることのできないものを受け入れる静謐さ、その二つを区別する賢明さを、わたしに与えてください」

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映画「狩人の夜」の巡回伝道師、聖書、教会、讃美歌、多くのアメリカ映画をみると深層にキリスト教が息づいているように思える。