自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

オアシス 2002年

二人だけの世界

韓国 イ・チャンドン監督

飲酒運転で清掃員を死亡させてしまった29歳のジョンドゥが出所してきた。前科3犯で社会不適応者の彼は家族の厄介者だった。

実は轢き逃げ犯は兄でジョンドゥはその身代わりに服役していた。

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彼は謝罪のために清掃員の娘コンジュのアパートを訪ねる。コンジュは重度の脳性麻痺で鳩が飛び、蝶々が舞っているという空想の世界で暮らしていた。

兄夫婦はコンジュ名義の障害者住宅に住み、コンジュを汚いアパートに一人で住まわせていた。

再び訪ねたとき、ジョンドゥはコンジュに可愛いと近寄り、レイプしようとするが、抵抗されて逃げ帰ってしまう。しばらくしてコンジュは不自由な指で口紅をさし、そして片言でアパートに来るようにジョンドゥに電話する。

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ジョンドゥは面白い話で彼女を笑わせ、彼女のために洗濯までする。コンジュは笑顔を見せるようになる。

やがて車いすを持ち出し二人は外出する。コンジュにとって生まれて初めてのデートだった。彼女は健常者の女性になった空想に浸る。しかしレストランでは入店を断られ、ジョンドゥの家族会ではどうしてこんな女を連れてきたのかと責められる。

 ジョンドゥは彼女をカラオケに連れてゆき、二人は夢みるようなひと時を過ごす。

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アパートに戻った二人、帰ろうとするジョンドゥをコンジュは不自由な身体と言葉で必死に引き留め、ある行為を求める。

 

「純愛」「性への渇望」そんな言葉では言いつくせない「愛の形」だった。オブラートに包まれた甘い物語ではなかったが、二人だけの世界に小さな希望があった。

 ヴェネツィア国際映画祭、監督賞、新人俳優賞、国際批評家協会賞、受賞作