自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

犯罪河岸 1947年

戦後パリの空気が漂っている

フランス アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督

パリ、歌手のジェニーは下町育ちの色っぽい女で誘惑も多かった。夫のモーリスはピアノ弾きで嫉妬深い男だった。ジェニーは軽薄そうに見えて、実はモーリスだけを愛していた。

アパートの階下には女性写真家ドラのスタジオがあり、彼女はひそかに幼馴染のモーリスに好意をもっていた。でも彼女はジェニーの親友でもあり二人の幸せを願っていた。

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成金のブリニヨンがジェニーに野心をもち、映画出演という話をもちかける。嫉妬深いモーリスは浮気を疑って、ブリニヨンを殺そうと家に行くが、すでに彼は死んでいた。

ところがその前にジェニーはワインの瓶でブリニヨンを殴り、倒れたので自分が殺したと思ってアリバイ工作をしていた。ドラはジェニーから話を聞き、助けようと証拠隠滅を図る。刑事アントワーヌが捜査に乗り出すが、三人とも嘘をつき、なかなか真相が見えてこない。

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ジェニーはアントワーヌの取り調べに「私は貧しい家に真冬の寒さの中で生まれた。小さな家に大所帯で12年間も暮らしたわ。粗末な食事でお風呂もなかった、成功するために男を利用してどこが悪いの」

アントワーヌは答える「理由にならんね、私の父は公園で暮らした。他人の汚物処理が父の仕事で私もその後を継いだ」

 

緊張感やサスペンスはあまりなく、ミステリーの形を借りた人情ドラマとでも言えばいいのだろうか。

 

映画の背景には戦後すぐのパリの風景やそこに生きる人々の暮らしがある。歌やダンス、サーカス、芝居など当時のショービジネスがとても生き生きと描かれてそれも魅力だった。

ヴェネチア映画祭監督賞受賞作