自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ひとくず 2019年

児童虐待というテーマでありながらハートウォーミング

日本、上西雄大監督 117分

母親の凜から育児放棄されている8歳の鞠は母親の愛人からも虐待を受けていた。電気もガスも止められ、食べ物もなく、アパートに閉じ込められていた。

そのアパートに空き巣に入った金田は鞠をみて、子供の頃、虐待を受けていた自分と重ね合わせて、助けようとする。

そこに母親の凜と愛人が帰ってきて暴力沙汰になり、金田はその愛人を殺してしまい、車で運んで埋めてしまう。母親の凜もまた子供時代、虐待に遭っていたことが分かる。

3人は一緒に暮らし始めるが、粗暴な金田は凜を「クソ女」と言って喧嘩が絶えなかった。

 

不器用で乱暴な言葉遣いしかできない金田だったが虐待されていた鞠には愛情を注いでいた。

実は金田は少年の頃に自分を虐待していた母親の愛人を殺し、少年院に送られ、その後は刑務所と空き巣狙いを繰り返して生きてきた。

空き巣狙いが虐待児を助けるという非現実的な設定だったが、いつしか引き込まれていった。「少女を地獄から救ったのは人間のクズだった」のキャッチコピーがこの映画のすべてを言い尽くしている。

上西監督の母親も毎晩のように父親に殴られていたという。そして児童虐待の実状を知り、その時の思いがこの映画に込められていた。

低予算で荒削りの映画だが、上西監督の執念のようなものを感じた。