自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

読書する女

1988年、フランス、ミシェル・ドヴィル監督

優しく美しいコンスタンスはベッドで恋人に「読書する女」という本を読んで聞かせる。その本は「他人に本を読んで聴かせることを職業」にする若い女性マリーの物語だった。

読んでいる内にいつの間にかコンスタンスは小説のなかのマリーになり、小説の世界と現実の世界が入り混じてゆき、夢か現か分からなくなる。

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マリーの最初の客は車いすの15歳の少年で、彼にはモーパッサンの「手」を読んで聞かせる。100歳の将軍夫人、判事、社長、少女・・と寂しくて孤独な客ばかりだ。

マリーはゾラ、ボードレールマルクスゴーリキーレーニン、プレヴェール、ジュール・ヴェルヌ、デュラス、ルイス・キャロル、サドの本を美しい声で読む。

コメディタッチでとくに意味のある映画ではないが、マリーのファッションと歩く姿がとてもステキで、町並みも石畳の裏道も古い家々も美しかった。

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美しい声で語られる流暢なフランス語の響きがなんとも心地よかった。大人のためのおしゃれでちょっとエロティックな物語という気がした。そしてフランスの女優ミュウ=ミュウの魅力にあふれた映画だった。

好きな本を読んで暮らす、本を読むためだけの一生があってもいいのではないか、と夢のような事を思ってしまう。フランスのエスプリもたっぷりつまっていた。