変わりゆく女たち
パレスチナ、フランス、カタール、タルザン・ナサール、アラブ・ナサール監督
パレスチナ自治区ガザ、ロシア移民クリスティンが経営する美容室は多くの女性客でにぎわっている。どの国でも女たちは美しくなるために美容室にやってくる。おしゃべりや携帯電話の会話で彼女たちの性格や境遇がだんだんわかってくる。
美容室の外では一頭のライオンをめぐって男たちが争い、騒然としている。やがて一発の銃声が聞こえ、マフィアとハマスとの銃撃戦が始まり、美容室は停電でランプだけの灯りの中、女たちは閉じ込められてしまう。
結婚式を控えた若い女、出産間近の妊婦、男と別れ話をする女、夫から暴力を受ける女、信仰深い女・・・ほとんどが美容室の中で起こる密室劇だ。
ガザがイスラエルに封鎖されているという政治的な背景はあるが、これはイスラエルとの紛争ではなく、パレスチナ人同士の内部抗争だった。男たちは権力争いに明け暮れていたが、女たちは穏やかな暮らしを望んでいた。それが交錯するガザの一日。
レバノン映画「キャラメル」はベイルートを舞台に美しくなろうとエステサロンに集まる女たちの物語。結婚を控えて不安になる女、不倫に悩む女、痴ほう症の母をかかえた初老の女、何度も芸能界のオーディションをうける中年女、などこの映画の主役も女たちだ。でも「ガザの美容室」とは違って、どこかラテンの国のような陽気さがあった。
どの国でも女の周りには男がおり、時代とともに変わりゆく女たちと変わらない男たちがいた。