人生の断片を散りばめた万華鏡
フランス、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督
16歳のとき、初めて舞踏会にデビューしたクリスティーヌは未亡人になった。子供も友人もなく、20年間の結婚生活はあまり幸せではなかった。
過去を捨て新しい人生を踏み出すために、舞踏会の手帖に書かれた男たちの元を訪ねようとする。舞踏会で私を愛した男たちだった。
10人のうち2人は亡くなっていた。皮肉にもいちばん惹きつけられたジュラールの居所だけが分からなかった。7人の男たちの「現在」を訪ねる。それは過去の自分を辿ってゆくことだった。
最初にジョルジュの家を訪ねると彼はクリスティーヌの婚約を聞いて自殺していた。母親は息子の死を信じられず気が狂っていた。
このエピソードから始まり7人の男たちを次々と訪ねる。誰もが自分の道を歩んでいて、昔のロマンチックな夢は捨てていた。
クリスティーヌは落胆して帰ってきた。そんな彼女に一番会いたかったジェラールの居所が知らされる。意外にも彼はクリスティーヌの家近くの湖の向こう側に15年間も住んでいた。喜んで会いにいくとそこに20年前のジェラールがいた。クリスティーヌは驚く。
しかしそれはジェラールの息子だった。少し前にジェラールは亡くなっていた。ジェラールはすぐ身近にいたのにクリスティーヌは今まで気付かなかった。
クリスティーヌはあの日のようにジェラールの息子と舞踏会に出かける。
たとえ「舞踏会の手帖」がなくても、私たちにも会いたいと思う人がいる。会えば後悔するかもしれない。思い出はそのままにしておいたほうがいいのかもしれない、でもあれからどのような人生を送ったのか、それを知りたい気もする。
そんな思いに揺れる古典的名作。