一粒で二度おいしい
アルゼンチン、スペイン、ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン監督
117分
ノーベル賞作家ダニエルはスペインのバルセロナで暮らしていた。故郷アルゼンチンの田舎町サラスから一通の手紙が届く。
名誉市民賞を授与するというのだ。ダニエルは40年ぶりに故郷のサラスに帰る。
最初は大歓迎されるが、徐々に反感や妬みが広がってくる。閉鎖的な田舎町で暮らしていく人たちの「平穏な日々」が芸術家肌のダニエルの主義には合わなかった。サラスの人たちが不気味な存在のように思えてくる。
様々な出来事が起こり、やがてダニエルは徐々に追い詰められてゆき、町を逃げ出そうとするが、彼は銃で撃たれる。
ところが不思議なことにここで場面が一転して、死んだはずのダニエルが髭を剃ってさっぱりとした姿で登場してきたのだ。
それはダニエルが新作小説「名誉市民」の記者会見で質疑応答をするラストシーンだった。
つまりこの映画そのものが彼の新作小説「名誉市民」なのではないだろうか。だとすればとてもヒネリの効いた結末であり、入れ子構造のようになっていた。
シニカルでビターな味のする、ブラックユーモアあふれた作品だ。