自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

シリアにて 2017年

神はあなたを赦すのか

ベルギー、フランス、レバノン フィリップ・バン・レウ監督

シリア内戦下の首都ダマスカス、主婦のオームは義父、娘二人と息子、メイドのデルハニ、同じアパートの女性ハリマとその夫と赤ん坊、そして姉娘のボーイフレンドとアパートに隠れ戦火を逃れていた。周りでは激しい爆撃の音がしている。

f:id:hnhisa24:20210813080911j:plain

ハリマの夫がアパートをでて駐車場まで行くと突然、スナイパーに撃たれてしまう。それをメイドが窓から見ていた。死んでいるのか、生きているのかはわからないが、女主人のオームに話すと、今は何もできない、ハリマに知らせると助けに行くから危険だと口止めをする。そして夜を待つのだった。

 

物語はこのアパートの中だけで展開し、しかもたった一日の出来事だった。水は貴重だった。携帯電話は通じない。しかし食事だけはきちんととっていた。アパートの外では戦争が続き、爆弾を積んだ車が走り回っている。

 

やがて男二人がアパートに押し入って、ハリマを襲う。オームたちに武器はなく、音をたてずに身をひそめるだけだった。

f:id:hnhisa24:20210813080937j:plain

ハリマはオームに言う「私はレイプされてまであなた達を守った、それなのにあなたは夫を助けに行かなかった、神はあなたを赦すのかしら」と。オームは何も言えなかった。

 

この映画には始まりも終わりもない。ただ戦争の一瞬を切り取っただけだ。彼らは戦争という日常の中で生き抜こうとしていた。私たちはコロナ禍という日常の中で怯えている。

生命は地球より重いかもしれないが、その重さには違いがある。