自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

17歳の瞳に映る世界 2020年

女二人の友情と冒険

アメリカ、エリザ・ヒットマン監督

17歳のオータムは妊娠していたこと知る。ペンシルベニア州では親の同意がないと中絶手術はできないので、従妹のスカイラーと夜行バスに乗ってニューヨークに向かう。

ニューヨークの相談所で胎児のエコー映像を見る。「あなたの人生で一番神聖な音よ」と胎児の心音を聴かされる。そして中絶ではなく、養子縁組を勧められるがオータムの意志は変わらなかった。

「中絶は人殺し」という倫理と「女は産む機械」という発想はどこかでリンクしているような気がする。

カウンセラーがちょっと立ち入った質問をするよという。その質問に「Never Rarely Sometimes Always」「一度もない、めったにない、時々、いつも」の4択で答えてゆくうちに、オータムは過去のそれぞれの時を思い出し、自然と涙がこぼれる。

 

中絶手術は明日になるという。二人はホテルに泊まるお金もなく、ゲームセンターや待合室や電車や街を歩きながら夜を明かす。

 

中絶の精神的、肉体的な痛みは女だけが負うものだった。二人にこんな会話がある「男だったらよかったと思う事ある?」「いつもよ」

 

この映画は女二人の友情と冒険物語ともいえるだろう。でも男の冒険物語のように未来が開けていくわけではなく、ただ過去が閉じていくだけだった。

苦いものは残るが、いい映画だ。