自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

仁義 1970年

仏教的死生観

フランス、ジャン=ピエール・メルヴィル監督

映画はこんな言葉で始まる。

「賢者ジッダールタまたの名を仏陀は、ひとくれの赤い粘土を 手に取り、それで輪を描いて言われた。 人はそれと知らずに必ずめぐりあう。たとえ互いの身に 何かが起こり、どのような道をたどろうとも、必ずや 赤い輪の中で結び合う」

原題は「赤い輪」

5年の刑期を終えて出所するコレイに看守が宝石店を襲う仕事を持ちかけてきた。

一方、マルセイユからパリに向かう列車の中、マッティ警視が連行していた容疑者ボーゲルが逃走する。

 

逃走するボーゲルを助けたコレイは宝石店襲撃の話を持ち掛ける。そして蛇、蜘蛛、トカゲなどの幻覚に苦しんでいた射撃の名手ジャンセンを仲間に加える。マッティ警視は闇社会の顔役サンティを脅して情報を得、彼らを追う。

派手なアクションもなく、ドラマチックな展開でもなく淡々と物語は進んでゆく。しかし無音のシーンが緊張感を高め、静かなサスペンスにあふれている。友情を縦糸に、裏切りを横糸に織りなす5人の運命。

 

仁義に生きる男たちの非情な世界を描いたフレンチノワール