自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

野菊の如き君なりき 1955年

野菊とりんどうの花

日本、木下恵介監督

渡し舟に一人の老人が乗っている。老人はこの地で育った斎藤政夫で船頭に思い出を語っていた。60年前の回想から物語は始まる。

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政夫は大きな屋敷の旧家の次男坊だった。母が病弱なため従妹の民子が手伝いに来ていた。15歳の政夫と17歳の民子は幼い頃から仲がよかった。そのため家のものや村人たちの間で噂になっていた。

それでも二人はほのかな恋心を抱いていた。ただ民子が年上だということで政夫の母は二人の仲を許そうとはしなかった。

祖母だけだが「私は60歳になるが、一番幸せだったのは好きな人と一緒になれたことだ。いろいろな事はあったけど、そんなことはどうでもよかった」と二人の仲を認めていた。

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政夫が中学校の寮生活をしている間に、民子を無理やり嫁入りさせてしまう。突然の電報で帰省してきた政夫は民子が流産の後、死んだことを知らされる。

 

時代は明治、まだまだ因習が根深く残っていた。ただ自然は素朴で美しいものだった。その中で繰り広げられる瑞々しい初恋の物語。

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今の時代には合わない映画かもしれないが、これを今、リメイクすればおそらくこの映画の「良さ」は失われるだろう。ここで描かれているのは日本人の心の原風景で、私たちがもう忘れてしまったものだ。

 

時代を超えてゆく映画もあれば、時代の中に生き続ける映画もある。そしてその時代にしか撮れない映画もある。