自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ちいさな独裁者 2017年

独裁者を生んだ服従心理

ドイツ、フランス ポーランド ロベルト・シュベンケ監督 119分

1945年4月、終戦間近、ドイツの上等兵ヘロルトは部隊を脱走して命からがら逃げてきた。捨てられていた車の中にドイツ軍の大尉の軍服を見つける。

その軍服を着て大尉に成りすまして、出会った兵士たちを部下にしてゆく。権力の味を知ったヘロルトはやがて脱走兵の収容所で、「ヒトラーの特使」と偽って脱走兵の大量虐殺を続ける。

収容所が爆破された後も「即決裁判所」と名乗り、町の住民や部下を処刑してゆく。誰もがヘロルトを大尉と信じて疑わず、忠実に命令に従ってゆくだけだった。

彼らは服従心理に囚われていた。

権力を握ると平然と虐殺を繰り返す狂気は敵国民だけではなく、やがて疑心暗鬼から見境なく味方のドイツ国民にも向かってゆく。

 

虐殺が判明した後もドイツの裁判でヘロルトはファシストに擁護され、大きな罪に問われなかった。最終的にヘロルトを裁いたのはイギリスの軍事裁判だった。1946年8月、彼は戦犯として処刑された。

 

狂気と服従について考えさせられるスリリングな作品だった。最も衝撃的なのはこれが実話であり、ヘロルトがまだ21歳だったということだ。