実際に起こった無差別銃乱射事件
オーストラリア、ジャスティン・カーゼル監督、112分
1990年代、オーストラリア、タスマニア島、少し発達障害のある27歳のマーティンは母と父と暮らしていた。
子どもの頃から周囲に馴染めず、同級生からは馬鹿にされ、マーティンを逆さ読みしたニトラム(うすのろ)と呼ばれ、孤立していた。
彼はサーフボードが欲しくて芝刈りのバイトを始める。そこで知り合った元女優で裕福な中年女性ヘレンと暮らすことになる。二人はなぜか気が合った。
ヘレンはニトラムに高級車を買い与える。ある日、運転中にニトラムがふざけたためにヘレンは自動車事故で亡くなってしまう。
もともと精神科の治療を受けていたニトラムだが、ヘレンが亡くなったことで大きく精神を狂わせ、怒りだけが増幅してゆく。
ニトラムがどのようにして銃を得て、35人を殺害する犯行に至ったのか、それまでの生活を描く。
オープニングから不穏な空気に包まれ、それがラストまで続く。ニトラムは母親に小言ばかり言われ、誰からも相手にされず、彼の鬱屈した怒りが全編にあふれていた。
希望のない終わり方で、喉にトゲが刺さったような痛みの残る作品だった。