自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

トウキョウソナタ 2008年

すべてがラストシーンに集約される

日本、オランダ、香港、黒沢清監督、119分

佐々木家は46歳の父親竜平、母親の恵、大学生で長男の貴そして小学6年生の次男健二の4人家族だった。父親はリストラされたことを家族に打ち明けられなかった。

 

母親は食事を作るだけの毎日に虚無感を抱いていた。偶然にも夫が失業していることを知る。長男の貴は中東で戦うためにアメリカの軍隊に入隊する。次男の健二はこっそりとピアノ教室に通い出す。

それぞれが家族にいえない秘密を抱えていた。

竜平の旧友黒須もリストラされていた。黒須は自分のことを「ゆっくりと沈んでゆく船だ」と言い、突然、妻と無理心中をする。それを知った竜平はショッピング・センターの清掃員として働き始める。

妻の恵は今までの生活を振り返り「どうやったらやり直せるのか。これまでの人生が夢だったら、どれだけいいだろう」と思う。

音楽大学付属中学の受験で健二がドビュッシーの「月の光」をピアノで弾くラストシーン、見事に弾き終わって去ってゆく健二と竜平と恵、それを静かに見送る審査員たち。バラバラに崩壊しようとしていた家族が奇跡的に再生した。

 

食べることは生きることだというかのような食事のシーン、どこか笑えるような家族の物語。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞。