ケイコは目がいいんです
日本、三宅唱監督、99分
2020年12月の東京、先天性の聴覚障害で両耳とも聴こえないケイコはホテルの清掃係として働きながら、下町の荒川ボクシングジムに通い鍛錬を重ねていた。
耳が聴こえないというのは大きなハンディだったが、すでにプロボクサーとして2勝をあげていた。
ケイコは「どうせ人はひとりだ」と孤独に陥り、様々な悩みを抱え一度休みたいと思っていたが、なかなかジムの会長には言い出せなかった。
彼女が父親のように慕っている会長には重い病があり、練習生も減り、ジムを閉鎖しようとしていた。ケイコはジムを閉鎖することが許せなかった。愛着のあるオンボロジムでボクシングを続けたかった。
会長は「ボクシングは闘う気持ちがなくなったらできないし、相手にも失礼だ」「ケイコに才能はないが人間としての器量がある」と言う。
ケイコが土手でぼんやりと座っていると、先日対戦した顔中傷だらけの女子ボクサーが現れて、「有難うございました」と言って、去ってゆく。
ケイコは同じようなボクシング仲間がここにいると思い、少し微笑む。そして土手を走り始める。感動的なラストシーンだった。
生まれつき耳は聴こえないが、プロボクサーのテストに合格し、通算3勝1敗の成績をのこした小笠原恵子さんの自伝「負けないで!」が原案。