中年ボクサーと家族
フランス、サミュエル・ジュイ監督 95分
全盛期を過ぎた45歳のプロボクサー、スティーブは49戦、13勝3分、33敗という情けない成績だった。彼には妻と娘と幼い息子がいた。
家族を養うために欧州チャンピオン、タレクのスパーリング・パートナーになる。スティーブはスパーリングで打たれ続けボロ雑巾のようになるが、ボクシングをやめることができなかった。
ピアノ教室に通っている娘が家で練習できるようにピアノを買ってやりたかった。
公開練習を見に来た娘は観客から罵声を浴びせられる父の姿に耐えられなくなって途中で帰ってしまう。スティーブは自分の負ける姿を隠すことなく娘に見せたのだ。
そんな時、思わぬチャンスが巡ってきた。チャンピオン戦の前座試合にスティーブが出ることになる。最後の試合である50戦目を勝利しようとスティーブは練習に励む。
スティーブは家庭的な男だった。家族への思いやりにあふれていた。それがこの映画をたんなる「ボクシング映画」にしていなかった。むしろ妻や娘との家族ドラマと言えるかもしれない。
闘う男を描くアメリカのボクシング映画とは違うハートフルなフランスのボクシング映画の面白さがそこにはあった。