自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ヴェラ・ドレイク 2004年

善意の果てに

イギリス、フランス、ニュージーランドマイク・リー監督、125分

1950年、戦後の雰囲気が残っているロンドン、家政婦のヴェラは善意のかたまりのような女性だった。夫と息子と娘の4人家族で幸せな日々を送っていた。

お茶とビスケットのつつましい暮らしの中で、ヴェラの優しい心が伝わってくる。

しかしヴェラは困っている人を助けるつもりで、望まぬ妊娠をした女性の堕胎を手助けしていた。ゴム器具で子宮に石鹼液を注入するというものだった。富裕層には合法的に中絶する方法があったが、お金のない労働者階級はヴェラのような人に頼むしかなかった。

 

いつものようにある女性に堕胎ほう助をするが、その女性が命を落としそうとなったことから、ヴェラの行為が警察の知ることになる。週末になるとこういった女性がたくさん病院に担ぎ込まれていたという。

逮捕されてからのヴェラは人が変わったように暗く沈んだ表情をしていた。家族や友人といった多くのものを失うことになると思ったのだろう。

ヴェラの日常を淡々と描きながら、違法な堕胎がいつ発覚するかその緊張感が高まってくる。

 

もちろんヴェラも堕胎が違法行為だということは知っていただろうが、「善意」をやめることができなかった。

「人を助けようとしたのはヴェラが優しいからだ」と夫は言う。若い息子にとっては「黒か白」しかなくヴェラを責める。ヴェラは2年6カ月の禁固刑をうけ刑務所に送られる。

ヴェラ役のイメルダ・スタウントンの見事な演技に圧倒される。