パリの恋とユーモアと粋
フランス ルネ・クレール監督
20世紀初頭のパリ、当時、活動写真とよばれた映画の黎明期。監督のエミールはかつて俳優であり、独身の今も女に不自由していなかった。彼を慕っている青年ジャックは俳優であり、助手、大道具係でもあった。
ある夜、エミールの友人で寄席芸人セレスタンの娘マドレーヌがパリにやってくる。ところがセレスタンは巡業に出かけて留守だった。
仕方なくエミールはマドレーヌの面倒をみることになる。マドレーヌの母は亡くなっていたが、かつてエミールがただ一人愛した女性だった。いつしかマドレーヌにかつて愛した女性の面影を見て、年は離れているが結婚を夢見るようになる。
ところが若いジャックとマドレーヌが恋に落ちる。二人はエミールを悲しませたくなくて別れようとする。
オープニングの石畳の道、映画小屋のシーンからエミールが女性を口説くラストシーンまですべてがパリの「恋とユーモアと粋」でいっぱいだった。
夜の街角、大道芸人の演奏、下町の人たちの歌声、カフェの流しのギター、演芸場のカンカン、恋をささやくダンスホール、夜の街を走る馬車、路面電車、活動写真のスタジオなど・・・クラシックな映画の魅力は映し出されるものすべてにあるような気がする。
エミールの隣で映画を観ていた若い女性がこう呟く「ハッピーエンドが好きだわ」そしてお約束通り、映画はハッピーエンドを迎える。あきれるほど屈託のない映画だった。