自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ぼくの大切なともだち 2006年

愛は金で買えるが、友情は買えない

フランス パトリス・ルコント監督

美術商のフランソワは自分の誕生日のディナーで「知り合いの葬式に行ってきたが親類を含めて参列者が7人しかいなかった」と話すと、ディナーに集まった人たち全員に「お前の葬式には誰も来ない、お前に友達はいない」と言われてしまう。

フランソワは10日以内に友達をつれてくるといい、20万ユーロのギリシアの壺を賭ける。友達のリストを作って会いに行くが、だれもフランソワを友達と思っていなかった。

 

f:id:hnhisa24:20200904084943j:plain

物知りでクイズが大好きで、感じが良くてだれとも親しくなるタクシー運転手ブリュノから友達を作るためのレッスンを受けることになる。ところがなかなかうまくいかない。

こいつなら大丈夫と6年生の頃の親友を訪ねると「クラス中がお前を嫌っていた、お前はクソ野郎だ」と言われてしまう。

損得勘定だけのフランソワは娘からもレズビアンで共同経営者のカトリーヌからも嫌われていた。

 

笑顔と他人への思いやりと誠実さが大切だとブリュノは言う。しかしそのブリュノも過去に親友に裏切られていた。ブリュノはフランソワを友達だと思っていたが裏切られて、去ってゆく。

f:id:hnhisa24:20200904085022j:plain

そして一年後のディナー、フランソワは変わっていた。共同経営者のカトリーヌから「あなたと友達になりたかったの」と意外な告白をされる。そのディナーでフランソワとブリュノは再会する。

 

子どもの頃から友達に囲まれてきた。思い起こすとたくさんの懐かしい顔が浮かんでくる。でも時の流れと共に病気や死やその他いろいろな事情で疎遠になってゆく。その時になって初めて友達って何だろうと思う。

気持ちのいいライトコメディだった。

帰れない二人 2018年

女は愛に生き、男はプライドに生きる

中国 フランス ジャ・ジャンクー監督

山西省大同、中国が大きく変貌する21世紀、2001年から2006年、そして2018年へ、17年間にわたる男と女の物語。

f:id:hnhisa24:20200901082214j:plain

裏社会で生きる渡世人の男ビンは仲間内の兄貴分だった、その恋人チャオは炭鉱労働者の娘、二人は羽振りのいい暮らしを楽しんでいた。

ある日、不良集団におそわれたビンを助けるために、チャオは銃を発砲する。警察の取り調べに「銃は自分のもの」と言い張り、5年間の刑に服す。ところがチャオの出所の日にジンは迎えに来なかった。

 

ビンの居場所は分からなかったが、手を尽くして探し当てる。ジンは以前とは違い渡世人としての気力を失っていた。その上、別の女性と暮らしていた。

f:id:hnhisa24:20200901082243j:plain

故郷に帰る途中、失意のチャオが夜空を見上げるとUHOが飛び去って行った。やがて彼女は故郷で麻雀屋を営み、裏社会で逞しく生きてゆく。

一方、ビンは酒の飲み過ぎで脳内出血を起こし、車いすの身体になりチャオの元に戻ってきた。チャオは渡世人の義理だと言って彼を受け入れる。ビンは杖を使いながらも歩くことができるようになるが・・

映画の背景には国家の政策によって故郷を追われ移住してゆく人々が映し出される。ダム建設のために村や町が沈んでゆく。中国が大きく変貌してゆく時代だった。

 

歌が聴こえる「♪・・愛があればやり直せるのか・♪」愛は時と共に過ぎてゆくだけのものなのか。ジャンク―監督の描く「愛の物語」はどこかフランス映画を思わせた。

永遠のこどもたち 2007年

哀切でファンタジックなゴシックホラー

スペイン、メキシコ J・A・バヨナ監督 製作ギレルモ・デル・トロ

医師の夫カルロス、息子シモンと共に37歳のラウラは閉鎖されていた孤児院に引っ越してきた。孤児院を再建して障害をもつ子どもたちの施設にしようとしていた。そこはかつてラウラが育った孤児院で、30年前に彼女はそこを去っていた。

f:id:hnhisa24:20200828084230j:plain

その孤児院でシモンが空想上の見えない友だちと遊んでいた。ある日、シモンが突然、姿を消してしまう。シモンは養子でHIVの保菌者、毎日薬を飲み、長くは生きられない運命だった。

 

霊媒師はこの屋敷には5人の子どもたちの霊が潜んでいるという。30年前、ラウラが孤児院を去った後に5人の子どもたちが毒殺されていた。その悲惨な出来事の痕跡として子どもたちの霊が屋敷に残っていたのだ。

「見えないものを信じなさい、信じれば必ず見えてくる」と霊媒師はラウラに言う。やがて秘密の部屋からシモンの死体が見つかる。

f:id:hnhisa24:20200828084254j:plain

日本の「だるまさんがころんだ」という子どもの遊び、同じように「1,2,3、壁を叩け」とラウラが言い、振り返ると暗闇の中から子どもが一人、また一人とあらわれてくる。その恐怖、しかしそれはやがて歓喜に変る。

子どもたちは「ラウラが帰ってきた、大人になって」と大喜び、ラウラの顔に触れる。

 

やがてラウラとシモンと子どもたちはネバーランドで永遠に生き続ける。不思議なことに30年前の灯台の光が周りを照らしていた。

 

スペイン映画独特の陰鬱な雰囲気を醸し出した哀切で美しい傑作ホラー。