自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

シビル・アクション、1999年

実話の苦さと爽快さ

アメリカ、スティーブン・ザイリアン監督

ボストンで仲間3人と弁護士事務所を開いているジャン・シュリトマンは障害裁判専門の弁護士だった。まず採算の取れる訴訟かどうかを考え、そして企業から莫大な示談金を得ていた。その示談金でジャンたちは豪勢な暮らしをしていた。

小さな町ウーバンで12人が白血病になり、そのうち8人の子供が亡くなった。被害者家族たちから原因の究明を頼まれる。しかしその依頼はどの弁護士からも採算が合わないと断られていた。ジャンは排水を流している大企業が示談に応じると考え、仕事を引き受ける。

 

しかし皮革工場の出す排水が原因と証明するためには、莫大な資金が必要だった。裁判を起こすが大企業の老獪な弁護士ファッチャーの反撃にあい訴訟は却下される。やがてジャンは仲間を失い、破産し、借金だけが残った。完敗だった。被害者家族たちは賠償金より謝罪を求めていた。ジャンは国家に正義を求め、ある行動に出る。

ジャンはベテラン弁護士ファッチャーに冷ややかに言われる「真実なんか探しても無駄だ。法は必ずしも正義の味方ではない」

 

傑作と言われる法廷劇はたくさんある。それらとは違って「シビル・アクション」は正義の弁護士が裁判に勝つという物語ではない。この映画には実話のもっている苦さと爽快さがある。

らせん階段 1946年

先駆的な古典スリラー

アメリカ、ロバート・シオドマク監督

1906年、馬車が走り、手回しの映写機、ピアノ演奏のサイレント映画が上映されていた時代。ニュー・イングランドの小さな町、3人の女性が絞殺された。

最初は顔に傷のある女、2人目は精神障害の女、3人目は足の悪い女だった。ウォーレン家の使用人ヘレンは口が利けなかった。

子どもの頃の火事のショックで口が利けなくなったヘレン。医者のパリーは彼女に好意を抱いていた。

吹きすさぶ嵐の中、閉ざされたウォーレン家での一夜の出来事。この屋敷にはヘレン、病床のウォーレン夫人、ウォーレン家の兄弟、秘書、使用人夫婦、看護師が暮らしていた。

ウォーレン夫人は10年前にこの屋敷で知的障害の少女が殺されていたのを見ていた。ヘレンにこの家から去ってゆくように説得する。

殺人者は父親に強い男になれと教えられていた。だから弱い障害者をこの世から抹殺しようとしていた。殺人者の正体を知ったヘレンはパリーに電話をかけるが声がでなかった。

 

ロウソクの炎と灯りが深い陰影のある映像を生み出す。怪奇映画のような雰囲気をもった83分間のスリラーを私は楽しんだ。

セブン・シスターズ 2016年

近未来を舞台にした怪作

イギリス、アメリカ、フランス、ベルギー、トミー・ウィルコラ監督

人口増加で食料やエネルギーが不足して、政府は厳格な一人っ子政策(児童分配法)を施行していた。2人目以降の子どもたちは冷凍保存されてしまう。

ある日、7つ子の姉妹が産まれる。祖父は7姉妹に月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜。日曜という名前をつけた。6人の出生を届けず、姉妹たちは隠れて暮らしていた。そして30年が過ぎた2073年、彼女たち7人はカレン・セットマンという1人の人生を分け合っていた。

同じカレンであるために、1人が事故で指を失うと他の6人も指を切り落とさなければならなかった。

銀行員カレン・セットマンとして1人が外出すると、他の6人は家に閉じこもる。ある日、出かけて行った月曜(マンデー)が突然消えた。秘密を知った児童分配局の男たちが姉妹たちを殺しにやってくる。姉妹の反撃が始まるが、次から次へと殺されてゆく。

 

やがて冷凍保存されていた子どもたちがじつは焼き殺されていたことが分かる。さらにラストで意外な真実が明らかになる。1人の人生を7人で分け合うことはできなかった。

 

ノオミ・パラスが1人7役を演じるという荒唐無稽な作品だった。映画として上出来とは言えないが、とても興味深く、魅力的な一本だ。