自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

トリコロール 赤の愛

トリコロール 赤の愛

1994年、フランス、ポーランド、スイス、

クシシュトフ・キエシロフスキー監督

 ジュネーブ大学生でファッションモデルのヴァランティーヌ、彼女は遠く離れた恋人から浮気を疑われていた。

ある日、彼女は近隣住民の盗聴を趣味とする退官判事ヴェルヌと知り合い、反発しながらもいつしか心を通わせてゆく。

一方、ヴァランティーヌの近くに住む法学生のオーギュストは司法試験に向っての勉強の日々だった。彼には年上の恋人がいた。

この二つの物語が交わることなく並行してすすんでゆき、そして意外な結末を迎える。人生の不思議さを感じさせるその結末に心が揺れる。

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なぜ私はある人と出会い、またある人とは別れてゆくのだろう。私とある人の二人が同時にここにいることの不思議さ。そこには「運命の糸」があるように思える時がある。

その糸を操っているのは神なのか偶然なのか。いつものありふれた世界がどこか「ミステリーゾーン」のように思えてくる。

現実的で見える世界の隣には見えない神秘的な世界があり、この二つの世界が一瞬、交わるときがある。その時、人は超自然的な存在を感じる。

もちろんこの映画の狙いは愛をとおして生きることの苦しみと再生を描くことだが、それでもなお私はこの映画のもつ不思議な「運命の糸」に惹きつけられた。