「宮本武蔵」5部作の2作目
1962年、日本、内田吐夢監督
沢庵和尚によって白鷺城の天守閣に幽閉された武蔵(たけぞう)は、3年間そこで万巻の書物を読み、人間的に成長した。名前を宮本武蔵(むさし)と改め、剣の奥義を究めるために修行の旅にでる。
京都では吉岡道場の門弟を打ち破り、奈良では宝蔵院の槍術に挑み、試合相手を打ち殺してしまう。
当時、奈良では無頼の牢人たちが跋扈して町の人びとを苦しめていた。宝蔵院の老僧日観師の策によって武蔵は般若坂でその牢人たちを斬りすててしまう。
日観老師は小石に「合掌」と書きしるし死体の上に置いてゆく、その小石を見て武蔵は怒り「殺しておいて合掌念仏とは・・嘘だ、ちがう、ちがう、ちがう、剣は念仏ではない、命だ」と叫ぶ。
武蔵にとって剣は命を賭けるものであって、合掌念仏のような慈悲は必要ではなく、強い者が生き残るものだった。
この後、武蔵は柳生の里で二刀流開眼、さらに京都に戻り吉岡一門との一乗寺下がり松での壮絶な決斗、そして佐々木小次郎との宿命の対決、巌流島へと続いてゆく。番外編として内田監督の遺作となった鎖鎌の宍戸梅軒との死闘を描いた「真剣勝負」がある。
内田吐夢監督作品には「大菩薩峠」3部作がある。これは「音なしの構え」の剣の達人、机竜之介が殺した者たちの亡霊に苦しむという仏教的な世界観の物語。
「宮本武蔵」や「大菩薩峠」のような求道的で骨太の時代劇は撮られなくなった。またこのような時代劇を撮る監督もいなくなった。