女に殺されると天国に行けない
フランス、ベルギー、ジョージア、スイス、エヴァ・ウッソン監督、
2014年、イラク、クルド人自治区、クルド人女性の弁護士バハールは故郷の町で夫や息子と暮らしていたが、ある日、IS(イスラム国)の襲撃にあい、男たちは殺され、女たちは性奴隷として売られてゆき、男の子どもはISの戦闘員として育成するために連れ去られる。
やがてバハールたちは命からがら逃げ出し、「女、命、自由」のスローガンのもとに女だけの戦闘部隊を立ち上げる。バハールは連れ去られた息子を奪い返すつもりだった。戦闘を密着取材するのはフランス人女性ジャーナリストのマチルダ、彼女自身も片眼を失い、夫を地雷で亡くしていた。
激しい戦闘や残虐なシーンがあるわけでもないが、荒涼とした戦場の緊張感が途切れなかった。イスラム国の兵士たちは自爆することを怖れていなかったが、ただ女に殺されることを怖れていた。女に殺されると天国に行けないからだ。だから女たちは憎しみをもってイスラム国の兵士たちを殺す。しかし戦闘部隊の女たちも殺される。
マチルダは国際社会にイスラム国の残虐、非道を訴えるが、「人々が欲しいのは夢や希望なの、悲劇からは必死で目を背ける」と無力感にとらわれていた。
イスラム国について高村薫は「作家的覚書」の中でこう書いている。「欧米を中心に世界各国の若者たちがイスラム国を目指す。イスラム国が、その戦士をかくも暴力と恐怖の支配に走らせるのはなぜなのか・・・革命の高揚なのか、狂信的な集団心理なのか」
世界は不均衡であり、地域紛争とテロは激化するような気がする。