自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

日の名残り 1993年

二つの過ち

イギリス、ジェームズ・アイヴォリー監督

 1958年、英国、ダーリントン卿の執事スティーブンスは20年も会っていなかった女中頭ケントンから手紙をもらう。「あなたは気難しい執事でしたが、私にとっては一番幸せな日々でした」

ティーブンスは彼女と一緒に働いた戦争前夜の1930年代を回想する。 

f:id:hnhisa24:20191029092346j:plain

執事という仕事に誇りを持ち主人に忠実なスティーブンスと、有能な女中頭のケントンは衝突しながらもお互いに惹かれ合ってゆく。

 

ダーリントン卿の城ではヨーロッパの将来を左右する国際会議が開かれ、ダーリントン卿たちは平和への希求と善意でナチスドイツを支援するが、ナチスはその善意を利用していた。

アメリカ代表の下院議員ルイスは「あなたたち貴族は政治のアマチュアだ、これからの政治はプロの仕事だ。この過ちにいずれ高い代償を支払うだろう」と演説をする。

f:id:hnhisa24:20191029092425j:plain

一方、ケントンは男友達から求婚され、秘かに想いを寄せていたスティーブンスに相談するが、「おめでとう」という言葉が返ってきただけだった。彼女は部屋で泣き崩れる。スティーブンスは自分の気持ちを抑えてしまった。 

f:id:hnhisa24:20191029092452j:plain

ティーブンスはケントンに会いに行く途中の村で、ナチに協力したダーリントン卿の執事であったことを隠すが、しばらくして隠した事を恥じる。そして翌日、「ダーリントン卿はほんとうの英国紳士でした。善意でナチに協力したが戦後はその過ちを正そうとしていました。私もまた過ちを正そうとしてこの旅にでたのです」と正直に話す。

 

陽が沈む直前に放つ一瞬の輝きは美しく、切ないものだった。英国の香りを漂わせた名作。