自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

霧の中の風景 1988年 

始めに混沌があった・・それから光がきた

ギリシア、フランス、イタリア、テオ・アンゲロプロス監督

 11歳の姉ヴーラと5歳の弟アレクサンドロスアテネからドイツ行き国際急行にのって会ったことのない父の住むドイツに向かう。しかし二人は切符も持たず、国境があることすらも知らなかった。無賃乗車で警察官に伯父のところに連れていかれる。

二人は私生児で母親がドイツに父親がいると嘘をついているだけだと伯父はいう。それを聞いてヴーラは「嘘よ、嘘つき」と反発する。やがて二人は警察署を逃げ出しドイツに向かっての旅を続ける。

旅芸人一座のバス運転手の青年オレステスと知り合い,3人の旅が続く。

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海の中から巨大な石の手が現れる、雪の降る空を見上げ立ち尽くす人々、旅芸人たち、トラック運転手にレイプされるヴーラ、ゲイの青年オレステス、雨の道を歩く姉弟、巨大な掘削機、死にかけの馬、海辺の3人、切符代のために身を売ろうとするヴーラ・・・

ロングショットでとらえたシーンの数々もこの映画の魅力であり面白さだ。

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オレステスが道で拾ったフィルムの断片を光にかざしてヴーラとアレクサンドロスに「霧の向こうに木が一本・・見えるだろう」と言う。でも姉弟には霧しか見えない。

 

川を越えればドイツ、夜、二人は舟で越えようとする、国境警備員の銃声が一発、暗闇に響く・・・・翌朝、二人が川の向こう側にわたると深い霧だった。しかし光がさしてくると霧の中に一本の木が見えた。それに向かって二人は歩いてゆき、木を抱きしめる。

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「始めに混沌があった・・それから光がきた、そして光と闇が分かれ、大地と海が分かれ、川と湖と山が現れた」

 

ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞、ヨーロッパ映画賞、作品賞受賞