自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

イン・ザ・ベッドルーム 2001年

 

予想を上回る出来栄え

アメリカ トッド・フィールド監督

 メイン州、漁業の町カムデン、夫マットは医師、妻ルースは教会の合唱団の指導をしている。18歳の一人息子フランクは建築を学んでいる大学生で夏の間、故郷に帰っていた。彼は年上の女性ナタリーを愛するようになる。

彼女には二人の息子と別居中で暴力的な夫チャールズがいた。よりを戻そうとしていたリチャードはフランクと口論になり、フランクを射殺する。

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明らかに殺人なのにリチャードは裁判で故殺と主張する。それが認められ刑期も5年程度だといわれ、保釈までされる。その上、ルースは町で何度もチャールズと出会う。

マットは事なかれ主義の理性的な夫であり、ルースは過保護で感情的な妻だった。二人は怒りのはけ口がなく、お互いに過去を責めあい、凄まじい罵り合いをする。

やがてマットは一つの決断をする。それはリチャードを殺すことだった。

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早朝、家に帰って来た夫、ベッドルームで妻が待っていた「殺ったの?」夫は何も言わずにベッドに入る。妻は「大丈夫、マット」・・・夫「奴の家の壁に奴とナタリーの写真があった」「それが何か」「彼女のあの笑顔・・・分からない」

 

一人息子を殺され血脈は途絶えてしまう、苛立ち、虚無感、後悔、内にこもる怒り・・を静かに淡々と描いてゆく。どのシーンにも夫婦の心の傷があらわれており、息苦しくなってくる。

 

この映画の狙いは何なのか、私にはよく分からなかった。でも途中からグングンと惹きつけられてゆく、そして畳みかけるような結末。いわゆる復讐劇、サスペンスとは少し手ざわりの違う作品で、奇妙な後味を残す映画だった。