自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

凱里ブルース 2015年

つげ義春の陰画的世界を思わせる

中国、ビー・ガン監督

中国、貴州省の凱里市の小さな診療所に勤める医師チェン、彼は9年の刑期を終えて故郷の凱里に戻ってきた。母も妻も亡くなっていた。チェンが可愛がっていた甥のウェイウェイは鎮遠の町に追いやられていた。

 

チェンは休暇をとって鎮遠に行き、ウェイウェイを連れ戻そうとする。診療所の老女医にその旅の途中に、かつての恋人を訪ねるように頼まれる。

やがてチェンはバイクタクシーでダンマイという村に立ち寄る。

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老女医のかつての恋人はすでに亡くなっており、甥のウェイウェイを連れ戻すことも出来ず、チェンは一人、列車で帰ってゆく。

 

ダンマイでの40分にも及ぶワンカットの長回しがこの映画の白眉だ。

凱里出身の若い女ヤンヤンがライブ会場に向かう。舟で対岸に渡り、山道をどんどん歩いてゆく。カメラはそれを追ってゆく。私たちをどこに連れてゆくのだろう。いつの間にか橋を渡って元の場所に戻ってくる。ライブ会場はすぐ近くだった。

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地理感覚や方向感覚が失われ、自分がどこにいるのか分からない。夢を見ているような浮遊感におそわれる。

 

映画が終わってはじめて全体像がとらえられた。面白いという作品ではないが、気になる映画だった。何度か鑑賞すればこの映画の「良さ」がわかるかもしれない。それだけの魅力ある映画のような気がした。