自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ウェンディ&ルーシー 2008年

上質な短篇小説のような

アメリカ ケリー・ライカート監督

深夜、野宿しながら全国を転々とする放浪者たちが焚火を囲んでいる・・アメリカの暗部を映し出すシーンから映画は始まる。

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オレゴン州の田舎町、若い女性ウェンディは愛犬ルーシーとともに仕事を求めてアラスカに向かっていた。ホテルに泊まる金もなく、車中で眠り、トイレで歯を磨き、着替えをしていた。

ある朝、車が動かなくなったが、修理代もなかった。空き缶を拾ってお金に替えようとする。30ドル、50ドルといったお金さえ、ウェンディにとっては貴重なものだった。

 

ドッグフードもなくなり、持ち金も少なくなり、ウェンディは食料品店で万引きをするが、警察に連行される。勾留されている間に店の前につないでいたルーシーがいなくなる。

ウェンディは町の中をルーシーの行方を捜す。野犬収容所にもいなかった。駐車場の老警備員が親身になってくれるがなかなか見つからない。ルーシーがいなくなれば、ウェンディはひとりぼっちになってしまう。

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たったこれだけの物語で、しかも82分という小品。言ってみればいくつかの湧水が合流し、小さな流れになり、やがてそれが川になってゆくようだ。

 

結末が意外だったので記憶に残る映画になった。犬好きの人にとってはたまらなく心揺さぶられる物語であり、現代アメリカ文学の上質な短篇小説を読んだような気がした。