自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

西部戦線異状なし 1930年

戦場の蝶々

アメリカ、ルイス・マイルストン監督

第一次世界大戦、フランスとドイツの西部戦線での凄まじい塹壕戦を描いた90年前の映画。反戦映画の原型とでもいうべき作品で、少しも風化していない。ドイツ兵をアメリカ人俳優が演じ、言葉も英語だった。

ドイツでは上映禁止になり、日本では検閲がはいったという。

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ドイツの町、群衆の大歓声のなか兵隊たちが行軍している。戦地に赴くのだ。人々は「戦争はすぐに終わり、死者もわずかだろう」と言う。

しかしドイツは多くの戦死者をだし、敗戦が近づいていた。

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学校では老教師が軍隊に志願するよう学生たちを扇動している。ポールたち学生は祖国に殉ずるために意気揚々と戦地に赴く。

しかしそこは学生たちが思っていたような世界ではなかった。兵士たちは食料もなく飢え、親友は野戦病院で足を切り落とし、戦友たちは泥の戦場で命をおとした。

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ポールは敵のフランス兵を銃剣で刺し、その最期を看取る。このシーンはフランス兵がドイツ兵を殺した後悔から彼のドイツの家族を訪ねるというエルンスト・ルビッチ監督の「私の殺した男」を思い出させた。

 

休暇で帰郷したポールは老人たちが戦争に熱狂している姿を見る。若者たちの死を嘆くよりも戦争の勝利を熱く語っていた。

学校では今も老教師が学生たちを煽り立てていた。ポールが戦争の真実を学生たちに話すと臆病者と言われる。もう故郷じゃないとポールは戦場に帰ってゆく。

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ポールは塹壕から手を伸ばし蝶々に触れようとする・・その姿をフランス兵の銃口がとらえていた・・その日も司令部への報告は「西部戦線異状なし」だった。