自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

カモン カモン 2021年

子どもたちの哲学

アメリカ、マイク・ミルズ監督

ラジオジャーナリストのジョニーは妹ヴィヴが精神的な病になった夫の看病をする間、9歳の甥ジェシーの面倒をみることになる。ジェシーは「木は地下の菌類で繋がっている」と得意げに話すような少し変わった少年だった。

 

デトロイト、ロサンゼルス、オークランド、ニューヨーク、ニューオーリンズと現在のアメリカの代表的な都市が映し出される。

ラジオ放送のため子どもたちへのインタビューシーンが物語の中に挟まれる。むしろこのインタビューシーンが映画そのものかもしれない。子どもたちに訊く「人生はどうなるのか、未来は良くなるのか」「大人は子どもの気持ちを理解している?」「両親が自分の子供だったら、何を学んでほしい?」

なんと子供たちがその質問に答えてゆくのだ。

携帯電話で何度も交わされるジョニーと妹ヴィヴとの会話の中で、ヴィヴは「息子のジェシーを愛しているけど同じ部屋にいるのが耐えられなくなる」という。それほど大人と子どもは理解しあうことが難しい。

 

哲学的な作品だった。しかしそれは大人の考える哲学ではない。子どもたちの柔らかな感性が生んだ哲学なのだ。

 

ジェシーは最後にこう言う「起こりそうだと思ったことは絶対に起こらず、思いがけない事ばかり起こるもの、だから先に進むしかないんだ.そう、先に、先に(カモン カモン)」