パンパンと呼ばれながらも戦後を生き抜いた女
日本、中村高寛監督 92分
夜のネオン街・・「伊勢佐木町ブルース」の歌声が聴こえてくる。「ハマのメリー」と呼ばれる老婆が横浜にいた・・の文字が映し出される。
戦後の混乱期からアメリカ兵相手の美人娼婦として、街角に立ち続け、名前も年齢も明かさないまま、50年に渡って生きてきたホームレスの「ヨコハマメリー」。彼女の白塗りの化粧と舞台衣装のような白いドレス、気品ある佇まいは横浜の一つの風景であり、都市伝説になっていた。
しかし彼女についての真相は誰も知らなかった。
友人で末期癌のシャンソン歌手永登元次郎をはじめ、舞踏家、芸者、美容室、化粧品屋、クリーニング店、酒場などメリーさんとかかわりのあった多くの人々の証言で彼女の実像に迫ってゆく。
1961年、40歳のメリーさんは横浜にたどりついた。1995年、74歳の時、メリーさんは突然姿を消した。帰郷したのだ。
元次郎さん宛にメリーさんからの手紙が届く。養老院でメリーさんは本名で、白塗りではなく、穏やかな老婆として暮らしていた。その施設に元次郎さんが慰問に訪れ、シャンソンを歌う。
それを静かに聴くメリーさん、心に沁みるようなラストシーンだった。
白塗りの化粧は他人になるための仮面だったのかもしれない。戦後、横浜の街の変遷が興味深い作品だった。