「母の日」の記憶
イギリス、エバ・ユッソン監督 104分
1924年3月の「母の日」その日は年に一度、メイドが里帰りを許される。ところがニヴン家のメイドのジェーンは孤児院育ちで、里帰りする家もなかった。
シェリンガム家の跡継ぎポールから密会の誘いの電話があった。二人は以前から秘密の恋人同士だった。
しかしポールには幼なじみのエマとの結婚が決まっていた。3家族が集まって結婚の前祝いの昼食会が開かれる。その前にポールとジェーンは屋敷の寝室で甘いひと時を過ごしていた。そしてポールはいそいで昼食会に行く途中、自動車事故で亡くなってしまう。
第一次大戦でニヴン家では二人の息子を、そしてシェリンガム家でも息子二人を亡くしていた。
孤児のジェーンは生まれた時から何もかも失っていた。だから失うものは何もなかった。彼女は作家になりたかったから、辛くても書き続けるしかなかった。
やがて作家として成功したジェーンは自分を変えたあの日曜日を振り返る。時系列が交錯してパズルのピースをはめ込んでいくように、ジェーン記憶の断片が切れ切れに蘇ってくる。
上品なエロティシズムがあり、上質の文学作品のような正統派の静かな物語だった。この時代の階級社会英国の優雅さが美しく描かれていた。